俺らの夏は終わり、もう引退して2ヶ月。そやけど、俺らは高等部に行っても、テニス部に入るつもりやし、ちょくちょく部活には顔を出しとった。まぁ、今日は久々に来たんやけど。実は、もうすぐ俺の誕生日なんや。この前、跡部が、たまたま誕生日に部活に行ったら、えらい祝われた、言うて、喜んどった。・・・まぁ、喜んでんのは、隠しとったみたいやけど。とにかく、もしかしたら・・・、なんて思ったりして、来た。で、まずは現・部長に挨拶でもしよ、思てコートで奴の姿を探したんやけど、そこにはおらへんかった。そしたら、鳳が先に気づきよって、日吉なら部室にいる、言うてくれたさかい、今部室の前にいる。そうや、どうせ俺の彼女も遅れて来る、って言うとったし、部室で待っとこ。
そして、俺は久しぶりにそのドアを開けた。

「久しぶりやなぁ!」

そう言うたけど、返事は無し。まぁ、想像はしとったけど。で、よう見たら、日吉だけやのうて、マネージャーのちゃんもおるやないか。ちゃんは、俺の彼女の妹。俺の彼女も元・マネージャーやったんや。そんで、なんと日吉の彼女。うーん、将来日吉と義兄弟なんてこともあるんか・・・。それはちょっと嫌やな。そんなことを考えながら、2人の方へ行った。

「お2人さん、仲えぇなぁ。部活中まで、熱々かいな!」

けど、この言葉にも無視。・・・一応、先輩来てんねんから、挨拶ぐらいせぇよ。

「自分ら、2人だけの世界、入らんといてくれる?」

そう言って、2人が向かい合っとった机に頬杖をつく。そしたら、ようやく気づきよった。けど、その後の言葉もひどい。

「・・・あぁ、どうも。」

これは日吉。

「忍足先輩、いたんですか?」

これはちゃん。

「「お久しぶりです。」」

これは2人揃って。で、会話終了。その後、また2人で話し出しよった。

「いやあ、ゴメン。2人の邪魔やった?そやけど、一応先輩来てんねんで・・・?言うことは、それだけか?」

「何の用ですか。」

そう日吉は冷たく言い放す。・・・ホンマ、ひどいわ。

「何の用、って・・・。先輩は引退したのに来たんやで?なんか、言うこと無いんか?」

「「特に無いです。」」

・・・はぁ、さようか。もう、この2人にかまうん、やめよ。ホンマ、この2人冷めとるわ。そやけど、日吉がちゃんと付き合う、って知った頃は、めっちゃ驚いたわ。だって、こんな冷めとる奴が付き合う、とかできるんやろか、と思ったし。けど、ちゃんもちゃんで、結構冷めてるし、まぁお似合い、と言えばお似合いかもしれへんけど・・・。
そやけど、こんな部活中にまで、2人きりで話してる、っちゅうことは、この2人も案外、そういうとこ、あるかもしれへんな。そう思いながら、俺は2人の話を盗み聞きしとった。そしたら、そんな考えはどっかへ行ってしもた。

「問題は鳳ね。」

最初、ちゃんのこの言葉聞いたときは、何か鳳が2人にちょっかいでも出したんかなぁ、と思った。

「俺はこのままでいいと思うけど。」

日吉のこの言葉を聞いたときは、日吉は余裕を持って、構えてるんやわ、と思った。そやけど、次のちゃんの言葉で、俺の勘違いや、ってわかった。

「でも、鳳はダブルスプレイヤーだったわけじゃない。だから、準レギュラーの誰かと組ませて・・・。」

「なぁ、自分ら。何の話、してるん?」

そう言って、俺は2人が座ってる方へ行った。

「今度の練習試合、誰をどう出すか、ってことですけど。・・・そうだ。忍足先輩も一応、先輩なんで、意見聞かせてくださいよ。鳳は、シングルスで出すべきか、ダブルスで出すべきか。」

「『一応』はいらんで、ちゃん。」

そんな俺のツッコミも無視で、ちゃんは話し出した。

「前までは、鳳も正レギュラーだから、シングルスで出した方がいい、っていう案だったんですけど・・・。でも、鳳はダブルスの経験が多いから、準レギュラーの誰かと組ませて、ダブルスプレイヤーを増やした方がいいかな、と。」

「だが、そんなことじゃ、シングルスが埋まらないだろ。」

「でも、ダブルスも埋まらないじゃない。」

「はぁ・・・。結局、話進まねぇな・・・。」

「うん、本当。」

そう言って、2人は同時にため息をついた。・・・息は合うとるみたいやけど、会話の内容は、恋人同士って感じとちゃう。ホンマに、部長とマネージャーの会話やった。

「まぁ、今日はこの辺にしておこう?日吉の練習時間も、そんなに削れないしさ。それに、今日はここまで決まったんだし。鳳の件は、今度は鳳にも聞いてみよう。・・・そうだ!できたら、宍戸先輩にも聞いておくよ。」

「あぁ、わかった。」

そして、2人は立ち上がった。すると・・・。

「侑士!何、2人の邪魔してんの?」

やん!待っとったで!!」

「・・・ちょっ・・・・・・!!なんで、来てるのよ?!来るときは言って、って言ってるでしょ?!!お姉ちゃん!!」

そう。部室に入ってきたんは、俺の彼女、んでちゃんの姉の

「今日は、侑士が誘ったから・・・。ね?」

「あぁ、突然やったしなぁ。」

「もう・・・。じゃ、お姉ちゃんと忍足先輩は、部室にいてて下さい!!行こう?日吉。」

「・・・あ、あぁ。」

そう言って、ちゃんはバタンと部室のドアを閉めて、出て行った。

「えぇんか、。」

俺はそう聞いた。姉妹は仲えぇみないやねんけど、なんか俺が見たときは、いつもこんな感じで、ちゃんが避ける。

「いいのよ。たぶん、恥ずかしいんじゃない?」

とかは呑気に言っとったけど、ホンマにそれだけなんやろうか。なんか、別の理由もあるんとちゃうかな、なんて俺は思った。んで、一回気になると、ずっと気にしてまうんが、俺やねんなぁ・・・。
というわけで、ちゃんに聞こうと思ったんやけど。

「別に避けてないですけど。」

という返事。・・・うん、まぁそうなるとは思っとったけど。

「それより、私は部室にいてて下さいと言ったはずですよね?それなのに、どうしてコートに来てるんですか?」

仕舞いには、そう言い出す始末。・・・ホンマに、冷たいわ。

「それに、姉はどうしたんですか?」

ほら、やっぱり、姉のことは好きなんやん。それやのに、あんな行動とるって、やっぱ何かあるんちゃうか、って思うやん。

か?・・・そういえば、さっき、久々にマネの仕事でもしようって、あっちの方へ行ったで。」

「は?!えっ・・・!!ちょっ・・・!し、失礼します!!」

なんや、めっちゃ慌てて。どないしたんや?ちゃんがあんな動揺しとるん、初めて見るわ。やからこそ、何あったんやろって、気になる。ってわけで、俺は後を追った。

「お、お姉ちゃん・・・!部室にいといて、って言ったじゃない!」

「あぁ。ごめん、ごめん。なんか、みんなを見てたら、体を動かしたくなっちゃって・・・。久々にマネの仕事、やっちゃおうかな、って。」

「お姉ちゃんは引退したでしょ?だから、私が全部やるから!」

「引退しても、先輩だもの。も忙しそうだから、手伝うわ。」

「いいから!大丈夫だから!お姉ちゃんは、見てて!わかった?」

そう言うちゃんは、めっちゃ必死で。しかも、どっか辛そうな顔もしてたような気がした。まぁ、俺はちゃんのこと、そないわからへんし、やっぱ日吉にも聞いてみよかと思った。ただ、日吉のことや。知っとったとしても、おそらく俺には教えてくれへんやろう。

「・・・何のことですか。」

ほらな、俺の予想通り。

「日吉も気付いとるやろ?・・・それとも、気付いてへんのか?!俺でも、ちゃんの変化に気付いたぁ、言うのに、彼氏の日吉が気付かんわけないやろ。」

「さぁ、どうでしょう。ただ、仮に気付いていたとしても、それを忍足先輩に話す必要は無いと思いますが?」

「ほな、ちゃん本人に聞くことにするわ。」

「どうぞ。忍足先輩に言うとは思えませんがね。」

つくづく、可愛げのない後輩や。まぁ、そういう奴の方が案外、わかりやすいねんな。

「そうやなぁ。なかなか、言うてくれへんやろうなぁ・・・。どないしよかなぁ・・・。まぁ、そしたら、言うてくれるまで、ずっとちゃんに付きまとうわ。今日は、ちょうどもおるし、一緒に帰ろっと。」

「・・・そ、それは・・・・・・。」

ん?ちょっと予想外な反応やな・・・。俺が付きまとう、言うたら、絶対日吉は嫉妬するに違いないと思うたんやけど。どっちか言うたら、嫉妬より不安みたいな感じや。まさか、日吉がちゃん取られる、なんて不安は無いやろうし?・・・ということは、今までのちゃんの言動とも合わせて考えられるんは。

「なんや、がおったらアカンか?」

「・・・!そういうわけでは・・・。」

・・・ビンゴやな。やっぱ、わかりやすいなぁ。前言撤回。かわえぇ後輩やわ。

「ほな、えぇやろ?」

「・・・わかりました。話します。って言っても、俺にも詳しく話したことはないので、わかりませんが。」

日吉は渋々という感じで喋ってくれた。でも、ホンマに詳しいことはわからんらしく、肝心なところは曖昧やった。そして、詳しく話してくれへんっていうことに、結構寂しそうな顔もしとった。・・・そりゃ、惚れた子に相談もしてもらえへんようじゃ、凹むわなぁ。
まぁ、日吉の言うとったことを簡単にまとめると。ちゃんは、日吉の前では一切の話をせぇへんらしい。で、引退後、部活に来たを今日みたいに追い返す。そやから、日吉も仲が悪いんかと聞いたことがあるらしい。そやけど、ちゃんの返事は仲良しだよ、やって。じゃあ、なんでって日吉が理由を聞いても、そこは答えてくれへんらしい。まぁ、日吉も心配やねんけど、あんまり聞くと、ちゃんの機嫌が悪くなるから、聞かれへんみたいやな。

ほんなら、ちゃんの機嫌を悪くしても、害の無い俺が・・・いや、無くはないけど。絶対、に怒られるし。・・・まぁ、日吉は絶対にちゃんの機嫌を悪くしたくないやろうし、ここは先輩の俺が一肌脱いだろうやないか!

ちゃん。お疲れさん。」

「・・・だから、なんで、いるんですか?」

「大丈夫。には部室で待ってもろてるし。」

「大丈夫じゃありませんよ。姉を1人で待たせて、どういうつもりですか?」

こんなことで怒るなんて・・・。やっぱり、ちゃんも、のことは好きみたいやなぁ。ホンマ、仲良しな姉妹や。

「それも大丈夫。日吉がいるやろうし。」

「・・・・・・そうですか。」

でも、次はすごく辛そうな顔になった。・・・これは嫉妬やろか。なんや、日吉の前での話はせぇへんっちゅうことらしいし、こんな嘘までついたんやけど・・・。まだ、肝心なところはわかりそうにもないなぁ。

「心配せんでも、日吉はを好きになったりせぇへんで?」

「・・・・・・・・・。・・・そんなの・・・・・・・・・。」

「ん?どないしたん?」

「そんなの、わからないじゃないですか。」

あらら。やっぱり、嫉妬かいな。大好きな姉でも、やっぱり愛しの日吉を取られたら困る、そういうことか。

「何言うてんねん。日吉が浮気するような奴に見えるか?」

「そうは見えませんけど・・・。でも、私のことが好きかもわかりませんもん。」

あれ?なんや、嫉妬どころか日吉自身に疑問を持っとるみたいやなぁ。

「そうか〜?アイツは、ちゃんのこと、めっちゃ好きそうやけど?」

「どこが、ですか?」

「どこが、って・・・。そうやなぁ・・・。結構、アイツも嫉妬したりとか、そういうところあるで。」

「そうですか?・・・そもそも、私には日吉がなぜ私のことが好きなのかがわかりませんよ。」

いつものように冷たく言い放つちゃんやけど。やっぱり、めっちゃ辛そうで。・・・う〜ん、日吉。原因は姉やなくて、日吉みたいやで?

「そりゃ、日吉に聞いてみんと、わからんなぁ。」

「私の良い所なんて、姉に近付ける、ぐらいしかありませんよ。」

え?ここで、また姉が出てくるん?・・・なんや、結構ややこしいなぁ。

「そんなことないって。ちゃんにも、えぇとこはぎょーさんある。」

「姉のことが好きな忍足先輩に言われても、説得力ありません。」

「そりゃ、まぁ、俺はが好きやけど、日吉はちゃんやろ?」

「そうだといいですけどね。」

冷たいどころか、もうどうでもいいとでも言うような、投げやりな態度で話し出したちゃん。・・・やっぱ、何かあるんや。

ちゃん、日吉が元はのことを好きやったとでも思ってんの・・・?」

「・・・・・・わかりません。」

「自分のことやのに?」

「・・・もう、放っておいてください!忍足先輩は、姉が好きなんでしょ?!だからって、妹の私のことまで構わないでください!どうせ、みんな姉が好きなんだから、姉目当てで近付く人には、正直疲れたんですよ!!」

ついにキレたちゃん。そやけど、これが本心みたいや。・・・なるほど。今まで何があったかは知らんけど、自分に近付く人はみんな姉目当てで、それが軽くトラウマみたいになってんのかな。そんで、せっかく付き合えた日吉も、そうかもしれへんと思ってしまう・・・そんなとこか。たしかに、は美人やし、頭もえぇし、もちろん性格もいいし、完璧やもんなぁ。・・・・・・・・・これは惚気やな。

「・・・そうやなぁ。俺は、がおるから、ちゃんの心配もするんかもしれん。だから、ちゃんのことを思って心配してる、とは言い切れへんなぁ。」

「じゃあ、放っておいてください。」

「でも、日吉はホンマに、ちゃんのことを心配しとったで?それに、こういうこと、日吉に話してないらしいやん?そやから、日吉は自分には相談してもらえへんって、寂しがっとったわ。」

「・・・・・・嘘でしょう?妹の私を励ますために、そんな嘘をつかなくても・・・。」

「嘘ちゃうって。なんなら、本人呼んでこよか?」

「・・・いいです。2人で嘘ついてるかもしれませんから。」

「そない疑わんでも・・・。」

「大体、俺が忍足先輩と共犯なんてするように見えるか・・・?」

・・・あ・・・れ・・・?なんや、めっちゃ怒ったような声が聞こえてきたんやけど・・・。もしかして・・・。いや、もしかせんでも・・・。

「「日吉?!」」

「すみません。やっぱり、気になるんで、先輩の後をついてきました。」

「日吉、部室にいたんじゃ・・・?」

「それは忍足先輩の嘘だ。」

「・・・・・・ってことは、姉が1人じゃないですか?!忍足先輩!」

・・・なんで、こういう状況でも、ちゃんは、そういう考えになるんやろ?やっぱり、姉のことは好きなんやな。それなら、よかった。

「じゃ、俺は部室に戻るわ。」

それだけ言って、俺は戻るフリをした。・・・ほら、2人の邪魔になるやん?でも、気になるし。ってわけで、俺はその後も近くで見とった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

うわ〜・・・。えらい沈黙やなぁ・・・。めっちゃ嫌な雰囲気や・・・。
そんな空気の中、先に口を開いたんは日吉やった。

「・・・・・・・・・で?」

「・・・何が?」

「だから、俺が先輩と共犯なんかすると思うか、って聞いてんだよ。」

「あぁ、それ。・・・・・・まぁ、しなさそう。」

「じゃあ、今から俺が言うこと信じられるな?」

「・・・・・・・・・さぁ。」

「信じろ。」

「はい・・・。」

いや、日吉・・・。怖い怖い・・・。今のは、完全に脅しやん・・・!まぁ、それだけ真剣っちゅうことやろう。
・・・・・・・・・それにしても。これからは、日吉を敵に回すようなことは止めとこ。

「確かに、先輩は立派な人だと思う。だけど、俺はお前も・・・。・・・いや。お前の方が立派だと思うし、尊敬もしている。」

「そん・・・けい・・・??」

「あぁ。正直、先輩は結構人気がある方だろう。俺にはよくわからないが、部員を見ていれば、そんな感じはする。だからこそ、先輩が頑張ってる姿は、みんなに見られ、それ相応の評価を受ける。だが、はその先輩の存在に圧倒され、過小な評価しかされていないように思う。これは、俺がを過大評価しているのかもしれないが、どちらにしろ、俺はお前の努力を認めているし、その姿勢に尊敬している。」

・・・・・・・・・日吉・・・。それ・・・。フォローになってへんのとちゃうか・・・?結局、がすごい、って言うてるようなもんやん。

「・・・日吉、あんま慰めになってないんだけど・・・・・・?」

ほら、やっぱり、ちゃんも不満そう・・・・・・ではなさそうや。そんなハッキリ表情が見えるわけやないけど、なんとなく、ちゃんの表情は嬉しそうに見える。

「でも、日吉が嘘ついてないことはわかった。ありがとう。」

「どういたしまして。」

「・・・・・・私ね、お姉ちゃんは本当に素晴らしい人だと思ってて。だから、すごく尊敬もしてるし、自慢の姉だし、大好きなお姉ちゃんなの。でも・・・。そんなお姉ちゃんの存在が、同時にコンプレックスでもある。お母さんやお父さんが軽い気持ちで『お姉ちゃんを見習おうね』って言う言葉だけでも、すごく気にしちゃって・・・。そんなわけはないのに、私は要らない子なんじゃないかと思ったりすることもあった。まぁ、そんな気持ちは、小さい頃にしか思ってなかったんだけど。最近は、学校の知り合いの人たちがお姉ちゃんのことばかり褒めるし、似たような気持ちになっちゃって。特に部活じゃ、お姉ちゃんがドリンクやタオルを渡す方が部員も嬉しそうだし・・・。でも、私もみんなの役に立ちたいから、とにかく仕事は一生懸命やろうと思って・・・。」

「そうか。」

・・・なんや、ちゃんがあんなに喋ってんの、初めて見たわ。しかも、ちょっと泣きながら喋っとるし。・・・・・・ちゃん、いつもは冷めた感じやけど、それは強がりやったんかな?今は、ものすごい弱々しく見える。

「だけど、お姉ちゃんの方が、ちゃんと仕事ができるからこそ、みんなに好かれてて、信頼されてるんだってわかるから、もうどうしようもないなって。・・・その事実を日吉なりに話してくれたから、ちゃんと嘘じゃないってわかったし、日吉が認めてくれてるなら、それでいいやって思えた。」

・・・・・・・・・今のは、意外やったな・・・。やっぱ、ちゃんも、日吉のことがちゃんと好きなんやな。
ホンマ、いつもは冷めたカップルやし、ちゃんがあんな笑顔で、えらい嬉しそうに「日吉が認めてくれてるなら――」なんて言うんは、意外やったわ。

「俺以外にも、ちゃんとのことを認めている奴はいると思う。さっき、練習試合のオーダーについて、鳳や宍戸先輩に聞いてみると言っていたが、それを聞かれて、の努力を認めないのはおかしいだろう?まぁ、俺の場合は欲目も入ってるかもしれないが、そういう人たちはちゃんとわかっているはずだ。」

「よくめ・・・?」

「・・・・・・・・・辞書で調べろ。」

「はぁ〜い・・・。まぁ、とりあえず、ありがとう。勇気付けてもらいました。」

「だったら、最初から俺に相談しろよな。」

「次からは、そうします。」

・・・・・・・・・うわ・・・。日吉が優しい・・・!!これは意外を通り越して、貴重やな・・・。やっぱ、日吉もちゃんのことが好きなんや。
・・・ちなみに、“よくめ”っていうんは“欲目”のことやろか?“欲目”いうたら、“贔屓目”みたいなもんやんな?日吉の奴、ホンマ・・・・・・。

「・・・って、忍足先輩?!どうして、こんな所にいるんですか!!姉はどうしたんですか?!」

・・・あれ。いつの間にか、2人が仲良く戻って来とるやん。

「いやぁ・・・、ちょっと・・・。あ、しもた!用事、思い出したわ!!ほな!」

「・・・・・・・・・今の、明らかに逃げたよね?日吉。」

「・・・だな。」

そんな風に、2人にため息をつかれてるなんてことは知らず、俺は急いで部室に戻った。

「すまん、。そろそろ帰ろか?」

「あら、侑士。おかえり。・・・・・・気は済んだ?」

「え・・・?何が・・・?」

のこと。」

「いやぁ、まぁ。待たしてしもて、すまんかったなぁ。」

「それはいいけど。あの子、自分がすごいってこと、どうしてわかってないのかしらね。」

「・・・、気付いとったん?」

「まぁね。でも、私からしたら、あの子の方が真面目だし、努力家だし。マネの仕事だって、みんなの為にちゃんとやってて、尊敬してるんだけどねぇ。」

「なんや、かて真面目で、努力家で、みんなの為にやっとったやん。」

「まぁ、不真面目ではなかったと思うけど、には負けるわ。それに、私は侑士がいるから、マネの仕事をやってた、っていうのもあるし。」

「それは、おおきに。」

「あの子は私以上にテニスが好きで、みんなの役に立ちたいと思ってるのよ。それに、彼氏があの日吉くんでしょ?もう、完全に遊ぶ気とか無くて、2人で部活を頑張ろうって感じじゃない。その辺がまた真面目だと思うのよねぇ。」

「それは、どういう意味や。」

「侑士がやる気無いって意味。」

「なんでや。俺かて、やる気満々やで?」

「うわ〜・・・。侑士に“やる気満々”って言葉、似合わないわねぇ・・・!」

「失礼やなぁ。もう、放って帰るで?」

「ゴメン、ゴメン。だから、一緒に帰ろ?侑士。」

「・・・当たり前や。」

「ありがとう。」

も、やっぱりちゃんのこと認めてるみたいやし、安心しいや、ちゃん。
って、俺が言うとこでもないな。ちゃんには、日吉がおるし。
ホンマ、あの2人、意外とそういうとこもあるんやし、もっと俺らの前でも見せてくれてもえぇのに。あの2人、噂のツンデレか?・・・・・・まぁ、そうっぽいと言われれば、たしかにそうやなぁ。

「お2人さん♪昨日は、俺のおかげで、より仲良うなれたやろ?」

「――っていうのが宍戸先輩の意見。鳳も同じようなことを言ってたし、私もそれでいいと思う。」

「そうだな。じゃ、その空いた分は・・・。」

「だから、無視はないやろ、無視は。」

「「・・・・・・あ、どうも。」」

「・・・・・・。」

「・・・悪い、。どこまで言ったっけ?」

「えぇっと・・・。私が宍戸先輩と鳳の意見を言って・・・。」

「あぁ、そうだった。この空いた分の話だったな。」

「そうそう。」

・・・・・・・・・うん。俺に対しても、ツンデレなんやな!俺は、そう思っとくで!!













 

これは完全に私の趣味です(笑)。
私は、基本的に冷めたカップルに憧れを持っています。もちろん、熱々なカップルというのも楽しそうでいいと思いますが、私自身にそういうイメージが無いので、こんな話を書いてみました!
そんな自分の理想を入れてみたのに、最後のオチが上手くまとまっていないなぁ、と残念に思っています・・・orz

それと、他のあとがきでも書きましたが、私にも姉がいます。この話にあるように、もうそれは素晴らしい姉です(笑)。
それで、今は自分にも姉とは違う良い部分もあるんだと自覚していますが、幼い頃は姉に嫉妬することも、よくありました。
まぁ、今でも羨ましく思うことは多々あるんですが、昔とは違うんだという、気持ちの切り替えみたいなものも、この話を書くことで、自分の中で整理しました。
要は、皆さんには感情移入がしにくい作品に仕上がっていると思います・・・。すみません。

('08/02/06)